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【開催報告】11/14「IAS-FRIS Symposium on Social Robots and Ethical Design(ソーシャル・ロボットと倫理デザインの考察~よりよい社会の構築のために)」を開催【高等研究院ワークショップ#001】

2024.11.22
 2024年11月14日(木)、九州大学稲盛財団記念館(伊都キャンパス)にて、九州大学高等研究院と東北大学学際科学フロンティア研究所の共催によるシンポジウム「IAS-FRIS Symposium on Social Robots and Ethical Design(ソーシャル・ロボットと倫理デザインの考察~よりよい社会の構築のために)」が開催されました。

本シンポジウムは、世界各国の専門家14名が登壇し、それぞれが、よりよい社会の実現のため、ソーシャル・ロボットをいかに設計していくべきかを主に倫理的な面から考察しました。

当日は、九州大学の小島立高等研究院副院長(法学研究院教授)および東北大学の早瀬敏幸学際科学フロンティア研究所長(総長特命教授)による開会挨拶の後、14名の専門家が講演と質疑応答を行いました。

まず初めに、基調講演者であるクリストフ・リュトゲ教授が登壇し、ミュンヘン工科大学AI 倫理研究所における主な活動に加えて、近年新たに登場したAI倫理の分野とハイデッガーの技術批判や、それらがAIに与える影響について紹介しました。また、AIが食品生産などさまざまな分野で活用される可能性があり、そのリスクについて警鐘を鳴らすとともに、EUのAI法がそれらをどのように規制しているかについても解説しました。


ミュンヘン工科大学 クリストフ・リュトゲ教授(AI倫理研究所長)

他の講演者も、ヘルスケアロボットや宗教ロボットといった、それぞれの研究対象のロボットについて、あらゆる観点から考察を行いました。特に、AIの利活用にあたって人間がどのように主導権を握っていくべきか、といった倫理的な問題については、本シンポジウムにおいて最も多くの講演者が取り上げた共通のトピックでした。

参加者からの質疑も活発に行われ、盛会のうちに終了しました。

本シンポジウムは次回、2025年秋頃に東北大学青葉山キャンパス(青葉山コモンズ)にて開催予定です。引き続きご注目ください。

*今回の各講演者の発表内容について、以下のとおり概要をご紹介します。
平田泰久教授:ロボットによる身体的支援を通じて、人々の自分自身への見方をポジティブに変え、ロボットと共により活力のある社会の構築を提案した。
ジム・トレセン教授:人とロボットの交流にあたって、プライバシー、人々の安心感や安全性への懸念について、それらを全て回避することは困難であるため、何を優先すべきか、価値判断が求められていることを説明した。
トレント・レオポルド委員:宗教活動を助ける宗教ロボットの利活用は既に始まっているが、魂を持つ精神的ロボットの実現が困難と思われる点について考察した。
ガブリエル・トロヴァト教授:宗教ロボットの設計や利活用には、ロボット倫理だけでなく宗教法も参照し、不敬な行為を引き起こさないように注意する必要があることを説明した。
ルース・ルイス委員長:IEEE技術社会の社会的影響に関する委員会(SSIT)の技術標準は未だ普及していないものの、参照されるべき多くの利点があることを紹介した。
オクサーヌ・ボック研究委員:人とロボットとの交流を心理学的観点から考察し、あらゆるリスクを避ける原則や、今後の研究の方向性についても考えた。
メラニー・サラントー教授:AIが芸術の創造性、合法性に与える影響を、類似の問題に直面している先住民の芸術の例を取り上げ考察した。
ヒリヤ・オットー研究員:人がロボットを利活用する際に、自分自身がデータ主導権を握っていると実感できる必要があり、プライバシーポリシーを改める必要があることを説明した。
董宗昊教授:身体的支援ロボットは、倫理や法規制に適合するように設計されることでさらなる改善を望むことができ、生活の質の向上に貢献することを説明した。
ジョシュア・ゲラーズ教授:ゼノボットのようなロボットへの権利付与を考慮するには、環境倫理学や技術哲学などあらゆる観点から考慮する必要があることを説明した。
成原慧准教授:ロボットの自律性が高まるにつれて、人間個人の意思決定過程への影響が大きくなるため、人は、ロボットの自律性とは違った意味での自律性を高める必要性が生じている。これらの自律性にまつわる概念の関連性について、法的な問題を通じて考察した。
ジュリアナ・ボールズ教授:医療分野でのAIの利活用において直面する課題について、具体例を用いて解説した。
翁岳暄准教授:技術と規制の間にギャップが生じることによって発生する「ペーシング問題」に対処するため、さまざまな法規制や標準がどのように策定されているかについて説明した。




※本シンポジウムは、高等研究院ワークショップの一環として実施しました。